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レッスン 10 & 11

 

英文契約書等における曖昧さと修飾関係

(註:ホームページソフトの関係で、英文の行とそれを指し示す数字がずれています)

 

信じられないかもしれませんが、あれほど完璧で文句のつけようもないほど立派に見える英文契約書も、よーく見るとその条文内容には曖昧さ (ambiguity*) が一杯!! 各条文の意味内容をはっきりさせよう。そして、おかしいと思ったら、怖めず臆せずコメントをつけてみましょう。可能なら、英文の修正までやってしまいましょう。

このような心構え・態度で(そして独善的にならないように気をつけて)英文契約書に取り組むと、あなたの実力は着実にアップして行きます。

* “ambiguity” は厳密には「両義性」「多義性」と訳されることがあり、同じ語句や表現が複数の意味内容を有し得る場合を指します。本レッスンでは、その点を踏まえた上で、解説ではより一般的な感じのある「曖昧さ」という言葉を使うことにします。なお、”vagueness”は「漠然性」という意味になり、“ambiguity”とは区別されます。

 

1. まず日本語の例から見ていきましょう。

#10-01

普通の日本語だが曖昧さのある表現

「白いきれいな服を着た女の子」 ⇒ (素直な解釈、ややひねくれた解釈、かなり強引な解釈)

 

(1) 「白い」はどこにかかるでしょうか?

「白い」服か?

「色白な」女か?

「色白な」子か?

 

(2) 「きれいな」はどこにかかるでしょうか?

「きれいな」服か?

「きれいな」女か?

「きれいな」子か?

 

(3) 「服を着た」はどこにかかるでしょうか?

女か?  子か?

 

(4) 「女の子」が少女(若い女性)の意味だとすると、その年齢は若く、かつ、人数は(常識的には)1人。

しかし、子連れの「女」と解釈すると、その「女」の年齢は若い女性、中年の女性、老年の女性などさまざまになるし、子供の年齢も乳幼児、学童とは限らない。また、人数は子供が1人だとすると、計2人になります。

 

(5) また、子連れの「女」と解釈する場合、連れている子供は男かも知れないし、女かも知れません。

 

(6) さらに、子供がその「女」とは別の場所にいるケースも除外できません。


 


#10-02

人の心理と表現の曖昧さを巧みに利用した話しかけ

次のように話しかけられた人は、その人の父親が生存しているか死亡しているかにかかわらず、たいていは疑問とか不信感を持つことなく、「はい」と素直に言葉を返します。どうしてでしょう。

「あなたのお父さんは死んでいませんね?」

 

 

#10-03

曖昧さのある日本語(英訳付き) − 警官が泥棒を追いかけた

(原文)警官が自転車に乗って逃げる泥棒を追いかけた。

The policeman pursued the thief riding a bicycle. / The policeman pursued the thief by bicycle.

 

(読点使用した日本語と英訳 - その1

警官が、自転車に乗って逃げる泥棒を追いかけた。

The policeman pursued the thief escaping by bicycle.

The policeman pursued the thief who was riding a bicycle.

 

(読点使用した日本語と英訳- その2

警官が自転車に乗って、逃げる泥棒を追いかけた。

The policeman, who was riding a bicycle, pursued the thief.

The policeman, riding a bicycle, pursued the thief.

 

 

#10-04

ビジネス文にも曖昧な表現はいろいろありますが、その一例

ABC自動車株式会社は、販売不振と円高進行で業績が悪化しており、過去最大規模の投資計画の見直しに踏み切る。

 

(1) 「投資計画」が過去最大規模のもので、その投資計画を見直す (to make a review of its largest-ever investment plan) のか、それとも

(2) これまで投資計画の「見直し」を何度か行ったがその中で最大規模の見直し(to make the largest-ever review of its investment plan)なのか。

 

 

2. 一般的英語に見る曖昧さの例

「日本語は曖昧さの多い言葉だが、英語はそうではない。特に、ビジネス英語の正確性は非常に高い」という見方は一般的な日本人の中に多いのではないでしょうか。でも、現実には、ビジネス英語においても、また特に正確性を要求されるといわれる法務英語においても、多くの曖昧さが発見されます。

 

まず、一般的英語の曖昧さから。

#10-05

ジョンは誰にキスしたのでしょうか?

英文

John kissed his girlfriend.

解説/ヒント

(1) ジョンのガールフレンド?

(2) その他の可能性は?

 

誰にキスしたのかという程度の問題なら(浮気や不倫が深刻な争いになっているケースを除いて)「それがどうした」ということですむ場合が大半でしょう。でも、”John killed his girlfriend.” とか、”John borrowed a lot of money from his girlfriend.”という場合、被害者や相手方が違うと大問題になりかねません。

 

 

#10-06

犬が追われている?

They are hunting dogs.

 

 

#10-07

警察官が発砲したことは確かなのですが・・・・・。発砲の正当性を巡って訴訟になった場合には、この<#10-07>の文章解釈も1つの争点になるかも・・・・。

The police shot the rioters with guns.

 

 

#10-08

<#10-07>の類例です。

米国ロースクールのテストで学生が書いた答案の表現ですが、インターネットで”unintended humor”(巧まざるユーモア)があると紹介されています。

英文

1

2

The robber entered the cafe and threatened the cashier standing at the register with a small-caliber handgun.

解説

この英文だと”standing at the register with a small-caliber handgun”the cashierを修飾するように解釈され「キャッシヤーが小口径の拳銃を構えてレジのところに立っていて、強盗は、そのキャッシヤーを脅した」ということになりかねません。

しかし、この英文を次のように修正すると、強盗による脅迫状況がはっきりします。

The robber entered the cafe and, standing at the register with a small-caliber handgun, threatened the cashier.

和訳

強盗は喫茶店に侵入し、小口径の拳銃を構えてレジのそばに立ち、キャッシヤーを脅迫した。

 

 

#10-09

馬鹿と言われたのは弁護士? それとも裁判官?

英文

The lawyer said the judge is a fool.

解説

(Punctuation - 1)

The lawyer said that the judge is a fool.

この文章だと、馬鹿と言われたのはjudge(裁判官)。そう発言した弁護士は法廷侮辱罪(contempt of court)で牢獄 (jail) に繋がれかねません。

 

(Punctuation - 2)

The lawyer, said the judge, is a fool.

この文章だと、馬鹿なのはlawyer(弁護士)

 

 

#10-10

私の意見に問題があった?

英文

The defect in my opinion is the lack of any mention of Jones v. Smith.

解説

<#10-09>と類例です(Jones v. Smith”は「Jones Smith事件」)。

 (Punctuation - 1)

The defect in my opinion is the lack of any mention of Jones v. Smith.

この文章だと、私の意見に問題があったということになります(=私はその意見の中でJones v. Smith事件にまったく触れなかったが、それは問題であった)。

 

(Punctuation - 2)

The defect, in my opinion, is the lack of any mention of Jones v. Smith.

この文章だと、「私の意見によれば」Jones v. Smith事件にまったく触れなかったことは問題であった、ということになります。

 

 

#10-11

正しいのは弁護士? それとも依頼人?  それとも他の誰か?

The lawyer told her client that she was right.

 

 

#10-12

出発(退出)しなければならないのは誰?

英文

Bob said to Joe that he must leave.

解説

(1) Bob said to Joe that Bob must leave.

(2) Bob said to Joe that Joe must leave.

(3) Bob said to Joe that Dan must leave.

 

 

#10-13

独身の女性は野蛮人?  コンマの打ちかたで意味は逆転?

Woman without her man would be a savage.

 

 

#10-14

この発言をした政治家の真意は選挙民にどう受け取られるでしょうか?

英文

I oppose taxes which hinder economic growth.

解説

(1) Some will think he opposes taxes in general, because they hinder economic growth.

Then the statement should be rewritten by adding a comma after "taxes";

"I oppose taxes, which hinder economic growth."

 

(2) Others may think he opposes only those taxes that he believes will hinder economic growth.

Then the statement should be rewritten by changing "which" to "that";

"I oppose taxes that hinder economic growth."

 

 

#10-15

建設中の支店は両方? それともどちらか一方?

英文

Hong Kong Branch and Bangkok Branch under construction

解説

last antecedent rule140頁、レッスン9. 2-(10)-(a)参照)によれば、”under construction”(建設中)の言葉が修飾するのは” Bangkok Branch”だけのはずですが、もし実際には香港支店も建設中だとすると、次のような修正を加えて修飾関係をはっきりさせておくべきでしょう。

“Hong Kong Branch and Bangkok Branch both under construction”

 

 

3. 法務英語に見る曖昧さの例

#10-16

「最近」、何が起きたのでしょうか?

英文

The client with the foot broken recently filed an action.

解説

この文章だけでは「最近」が修飾する内容、つまり、(1)「最近、足を折った(クライアント)」のか、(2)「(クライアントが)最近、訴訟を提起した」のかが不分明です。

(1) の意味にするには、The client who recently broke the foot filed an action.” とし、また、(2) の意味にするには、The client with the foot broken filed an action recently.” とすれば曖昧さのない文章となります。

spoken Englishの場合は、短いposebrokenの後にいれるか、recentlyの後に入れるかによって意味はかなり明らかになります。

 

 

#10-17

25歳の女性がクラブに入会を拒否される可能性のあるクラブ規約はどちら?

英文

(1) The club is composed of women and men over 30.

(2) The club is composed of men over 30 and women.

解説

(1) の文章だと、”over 30”がどの語を修飾するかの解釈によって、クラブの会員資格があるのは、(a) 30歳以上の男性と30歳以上の女性なのか、又は(b)すべての女性と30歳以上の男性なのかがはっきりしません。

 

(2) の文章だと、クラブの会員資格があるのはすべての女性と30歳以上の男性ということになります。

従って、(1)のような会則を有するクラブでは、25歳の女性はクラブに入会を拒否される可能性があるということになります。

 

 

#10-18

電気自動車に対する$500の補助金(subsidy)を貰える人の範囲は?

英文

Every owner of an electric vehicle in New York is entitled to a subsidy of $500.

解説

この文章で”in New York”が修飾するのは、ownerか、それとも(New Yorkで登録された)electric vehicleでしょうか?  その解釈によって、補助金を受ける人の範囲が異なります。なお、この文章では”New York”New York州を意味するのかNew York市を意味するのかについても曖昧さがありますが、ここではNew York市を意味するものとします。

 

修飾関係を明確化するにはどう修文すればよいでしょうか?

Every owner of an electric vehicle who resides in New York is entitled to a subsidy of $500.

(この文章では、ニューヨーク市に住んでいれば、シカゴで登録した電気自動車を所有していても$500の補助金を貰える。)

 

Every owner of an electric vehicle which is registered in New York is entitled to a subsidy of $500.

(この文章では、ボストンに住んでいても、ニューヨーク市で登録した電気自動車を所有していれば$500の補助金を貰える。)

 

Every owner, who resides in New York and owns an electric vehicle which is registered in New York, is entitled to a subsidy of $500.

(この文章では、ニューヨーク市に住んでいて、かつ、ニューヨーク市で登録した電気自動車を所有している者だけが$500の補助金を貰える。)

 

 

#10-19

次の英文によると有資格者はどんな人になりますか?

英文

Only persons who are doctors and lawyers qualify.

 

 

#10-20

ミリオネシア国に輸入を許可されるクルマの2輪駆動車/4輪駆動車の区別は?

英文

(1) All vans, sport vehicles, minicars, and trucks with two-wheel drive are permitted to import to Millionesia.

(2) All vehicles with two-wheel drive, including vans, sport vehicles, minicars, and trucks are permitted to import to Millionesia.

解説

(1) “All vans, sport vehicles, minicars, and trucks with two-wheel drive”

last antecedent ruleによれば、トラックは2輪駆動車でなければならないが、バン、スポーツカー及び軽自動車は2輪駆動車でも4輪駆動車でもよい(しかし、last antecedent ruleは絶対的な解釈規則ではないので、バン、スポーツカー、軽自動車及びトラックはすべて2輪駆動車でなければならないという解釈もあり得る)。

 

(2) “All vehicles with two-wheel drive, including vans, sport vehicles, minicars, and trucks”

この表現だと、バン、スポーツカー、軽自動車及びトラックはすべて2輪駆動車でなければならない(解釈について争いの起こる余地はない)。

 

 

#10-21

ペットショップの契約書―生後5週間の雌ウサギは売るつもりはなかったのに・・・・

英文

An owner of a pet store agrees to sell part of her stock to a purchaser. The agreement made between them states that it covers “all female rabbits and hamsters over six-weeks-old.”

問題提起

この表現では、販売対象とされたウサギとハムスターの範囲について、売主と買主との間で争いが生じないでしょうか? 

その範囲についてどのような解釈の可能性があるでしょうか?

解説

ウサギについての組み合わせは、

(a)すべての雌ウサギ(生後期間不問)か, (b)生後6週間を超えるすべての雌ウサギ、

ハムスターについての組み合わせは

(a)生後6週間を超えるすべての雌ハムスターか、(b)生後6週間を超えるすべての雄・雌ハムスター。

このため、販売対象として解釈される可能性のあるウサギとハムスターの種類の組み合わせは4とおりになります。

 

もし、あなたの会社が売主で、販売するペットは生後6週間を超える雌ウサギと生後6週間を超える雄・雌ハムスターとするつもりの場合、その意図を明確化するには上記文言をどう修正すればいいでしょうか?

 

“all female rabbits and hamsters both over six-weeks-old”

 

上記4とおりの販売条件について誤解のないような書き方をするにはどうすればよいでしょうか?

文章ベースではどうしても誤解が生じ易いので、厳密を期する場合はtabulation(箇条書き)にする。

 

 

#10-22

カエルも絶滅の危機に瀕している?

英文

The defendant was charged with transporting endangered salamanders and frogs.

語句

was charged: 起訴された

endangered: 絶滅の危機に瀕した

salamander: サンショウウオ

解説

この英文だけでは、サンショウウオが絶滅の危機に瀕していることは読み取れるが、カエルがそうなのかどうかは曖昧です(前後の文脈から、被告人の行為が絶滅の危機に瀕しているサンショウウオと絶滅の危機に瀕しているカエルに関係するものであることが明らかな場合は別です)。

もし、カエルも絶滅危惧種なのであれば、曖昧さのない内容にするには、英文は

“The defendant was charged with transporting endangered salamanders and endangered frogs.”、あるいは、“The defendant was charged with transporting salamanders and frogs both in danger of extinction.”とすべきであるということになります。

もし、カエルは他の理由で運搬することが違法である、というのであれば、英文は、

“The defendant was charged with transporting frogs and endangered salamanders.” とすべきである、ということになります。

和訳

(1) 被告人は、絶滅の危機に瀕したサンショウウオと絶滅の危機に瀕したカエルを運搬した罪で起訴された。

(2) 被告人は、カエルと絶滅の危機に瀕したサンショウウオを運搬した罪で起訴された。

 

 


 

#10-23

including に続くいくつかの言葉の後に限定文句が付されると曖昧になることがある

英文

1

2

3

4

TekNova Corporation shall provide all necessary technical supports to CosmosArrow, Inc. for the manufacturing of Electronic Parts, including installation method, matching system, and hybrid technology, but always subject to license agreement.

解釈と和訳

解釈その1

subject to license agreementは、all necessary technical supports全体にかかる

 

(和訳)

TekNova社は、CosmosArrow社に対して、電子部品を製造するために必要な一切の技術支援を提供するものとする。この技術支援には、取り付け方法、整合システム及びハイブリッド技術を含む。上記一切の技術支援の提供にあたっては、ライセンス契約を締結することを条件とする。

解釈その2

subject to license agreementは、including以下のinstallation method, matching system, and hybrid technologyにかかる。

 

(和訳)

TekNova社は、CosmosArrow社に対して、電子部品を製造するために必要な一切の技術支援を提供するものとする。この技術支援のうち、取り付け方法、整合システム及びハイブリッド技術にかかる支援提供にあたっては、ライセンス契約を締結することを条件とする。

解釈その3

subject to license agreementは、直前のhybrid technologyのみにかかる

 

(和訳)

TekNova社は、CosmosArrow社に対して、電子部品を製造するために必要な一切の技術支援を提供するものとする。この技術支援には、取り付け方法、整合システム及びハイブリッド技術を含むが、ハイブリッド技術にかかる支援の提供にあたっては、ライセンス契約を締結することを条件とする。

問題

<#10-23>の文章にどのように手を加えれば、解釈その1−解釈その3に沿った意味になるでしょうか ?

 


4. 曖昧さを含む契約書文言と争訟

#11-01

コンサルティング契約のコンサルティング料に関する条文の一部です。thereafterの解釈が問題になる可能性があります。

英文

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3

4

5

6

(Consulting Fee)

The Customer shall, as the Consulting Fee, pay the Consultant six percent (6%) of the gross annual turnover (the “Turnover”) of the Goods sold by the Customer under Article 12; provided, however, that if the Turnover thereof reached five million Japanese Yen (\500,000,000) in any Business Year, the Consulting Fee shall be reduced thereafter to three percent (3%) thereof.

解説

以下の3点を前提とします。

 このコンサルティング契約の締結日は201141

 Business Yearは毎年4翌年3

 20111031日にGoods(本商品)の売上額が5億円に到達

本商品の売上額が5億円に到達した後のコンサルティング料率はいくらになるのでしょうか。いくつかの解釈が可能です。

 

(1) thereafterthereを「本商品の売上額が5億円に到達した日」と解釈する。

そうすると、コンサルティング料率は、2011111日以降ずーっと3%ということになります。

 

(2) thereafterthereを「本商品の売上額が5億円に到達したbusiness year」と解釈する。

そうすると、コンサルティング料率は、2011111日から2012331日までは6%ですが、201241日以降はずーっと3%ということになります。

 

(3) thereafterthereを「本商品の売上額が5億円に到達した日」とするが、3%の料率が適用される期間はその事業年度の末日までで区切られると解釈する。

  そうすると、コンサルティング料率は、2011111日から2012331日までは3%ですが、201241日からの売上額については(原則に戻って)6%ということになります。そして、201241日からの事業年度のある時点で本商品の売上額が5億円に到達した場合に、同じようにンサルティング料率が変動する、ということになります。

 

Customerの立場からは、(1)又は(2)の主張が予想され、Consultantの立場からは(3)の主張が予想されます。

和訳

(コンサルティング料)

顧客は、第12条の定めに基づき販売された本商品の年間売上額の6パーセントをコンサルティング料としてコンサルタントに支払うものとする。但し、ある事業年度において本製品の年間売上総額が5億円に達した場合、Consulting料はそれ以降3パーセントに引き下げられるものとする。

  


#11-02

曖昧というよりは、殆ど無内容とされた手術承諾書に関する訴訟事件(実例)

メモ

単純な盲腸 (simple appendectomy) の手術のはずがreproductive organs(生殖器官)まで切除されてしまい、女性患者と病院(&保険会社)との間で訴訟になって病院が敗訴しました。やや古いものですが、米国ルイジアナ州での事件です。あなたが患者であるとした場合、次の承諾書文言を読んで不安なく署名できるでしょうか。

英文

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4

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8

9

Authority to Operate

Date 3/17/58

 

I hereby authorize the Physician or Physicians in charge to administer such treatment and the surgeon to have administered such anesthetics as found necessary to perform this operation which is advisable in the treatment of this patient.

 

Signed Dolly Rogers

語句

L.4

 

L.5

L.6

L.7

Physician or Physicians: 医師、医者、in charge: 担当の、administer: (治療を)行う

treatment: 治療、surgeon: 外科医、anesthetic: 麻酔(薬)

operation: 手術

patient: 患者

英文の

構成

この手術承諾書は、おそらく次のような構成、修飾関係を前提としたdraftingになっていると考えられます。

I hereby authorize the Physician or Physicians in charge to administer such treatment (as found necessary to perform this operation which is advisable in the treatment of this patient) and

(I hereby authorize) the surgeon to have administered such anesthetics as found necessary to perform this operation which is advisable in the treatment of this patient.

解説

この事件は、ルイジアナ州の第一審では病院側が勝訴、これを不服として患者側が控訴しました。同州の控訴審の裁判所は次のような理由で患者側勝訴の判決を下しました。

・この手術承諾書と称されるものの文言はあまりに曖昧であって、殆ど無意味である。

・患者が同意したとされる手術の内容は示されておらず、何についての同意がなされたのか不明である。

・この手術承諾書と称されるものは、この事件の事実関係を認定するにはまったく役に立たない。

確かに、この手術承諾書は患者が一読してすぐ大事なポイント何なのか理解できるような文章ではありません((一般のアメリカ人は普段このような文章に遭遇することは殆どないようです)、)。そもそも、この承諾書はあらかじめ印刷された病院側のblanket consent form(包括的同意書フォーム)であり、肝心の病名とか手術内容、担当医、執刀医などに関する具体的記述は一切ありません。また、advisable, necessaryという言葉の内容も不明です。したがって、第三者が客観的にこの紙一枚を読んだだけでは何の手術か、誰が手術するのか、必要に迫られて手術の範囲が拡大する場合はどの程度までなのか、などのことについてまったく分からない内容です。

和訳

手術承諾書

1958317

 

私は、ここに、担当する医師に対してこの患者の治療において妥当な手術を行うのに必要と考えられる治療を行うことを認め、また、外科医に対してこの患者の治療において妥当な手術を行うのに必要と考えられる麻酔措置を行なわせることを認めます。

 

Dolly Rogers 署名

 

 


#11-03

契約条項の曖昧さとExtrinsic Evidence(外部証拠)の検討

英文

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1

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3

4

5

6

The Owner will not after the date of this agreement sell, lease, or permit to be occupied any real estate which the Owner owns, manages, or otherwise controls within one mile of the Land for the purpose of constructing, or having conducted thereon, any fast-food restaurant or restaurant facility whose principal food product is chicken on the bone, boneless chicken, or chicken sandwiches.

語句

L.2

L.5-6

real estate: 不動産

chicken on the bone: 骨付き鶏肉、boneless chicken: 骨なし鶏肉

事件の

概要

このケースはイリノイ州で実際に訴訟になった案件をベースにしたものです。

土地所有者のA社とチキンのファストフード・チェーンを経営するK社が、ファストフード レストラン設置のためにイリノイ州のある土地(「本件土地」)についてリース契約(本件リース契約)を締結しました。K社は、競合他社の排除が経営戦略上重要であると考え、上記のような条文を設けました。ところが、本件リース契約締結後、A社は、チキン料理を売り物にしているWレストラン(ファストフード形態ではなく、通常のレストラン形態のもの)に対して、本件土地から1マイル以内にある場所の土地をリースする別契約を締結しました。K社は本件リース契約違反であるとしてA社に猛抗議をし、裁判所に提訴しました。A社は本件リース契約の条文をどのように解釈してこの別契約の締結に踏み切ったのでしょうか。争いになったのは、下欄のL. 4-6の文言(太文字部分)です。

両者の

主張

“any fast-food restaurant or restaurant facility whose principal food product is chicken on the bone, boneless chicken, or chicken sandwiches.”

の文言に関して、

A社は次のような主張をしました。

この文言は、

(1) any fast-food restaurant whose principal food product is chicken on the bone, boneless chicken, or chicken sandwiches

(2) any fast-food restaurant facility whose principal food product is chicken on the bone, boneless chicken, or chicken sandwiches

と読むべきであって、いずれもファストフード形態のものを禁止している。そして、fast-food restaurantfast-food restaurant facilityの違いは、前者は独立したレストラン店舗を指すのに対して、後者はフードコートに出店するような形態を指す。

従って、チキン料理をメーンとするレストランであっても、ファストフード形態でない一般のレストランへの土地リースは契約違反ではない。

従って、A社はWレストランへの土地リースを行うことができる。

 

K社は次のような主張をしました。

この文言は、

(1)    any fast-food restaurant whose principal food product is chicken on the bone, boneless chicken, or chicken sandwiches

(2)   any restaurant facility whose principal food product is chicken on the bone, boneless chicken, or chicken sandwiches

と読むべきであって、後者はファストフード形態でない通常のレストラン形態のものでチキン料理をメーンにしているレストランを指す。

従って、A社によるWレストランへの土地リースは契約違反である。

裁判所の判断

(1) まず、” any fast-food restaurant or restaurant facility whose principal food product is chicken on the bone, boneless chicken, or chicken sandwiches.”の文言はambiguous(曖昧)である、という判断がなされました。

(2) 次に、契約の解釈に関するアメリカの判例によれば、当事者の意図は原則として契約文言のみに基づいて解釈されるが、契約文言が曖昧な場合、裁判所は契約書以外の外部証拠(契約締結前交渉に関するメモなど)を検討することができる(Where an ambiguity exists, parol or extrinsic evidence may be considered to interpret the contract.)として、外部証拠の検討を行いました。

(3) このケースでは、契約締結前交渉で、K社はfast-food restaurantの排除にのみ興味を示し、一般のレストランについては(そのメーン料理が何であれ)問題にしないという内容のメモをA社との間で残していたことが判明し、K社の言い分は退けられました。

この件から窺えること

本件は、土地リースをめぐってLesseeが競合他社排除を目論んだが不首尾に終わったという点で<#08-15>に類似したところがあります。ただ、本件の場合、K社は契約文言のdraftingの際に、ファストフード形態のレストラン以外の一般レストラン(でチキンを扱うもの)をすべて排除することを望んだのに、土地所有者のA社の抵抗にあって上記表現の文言にとどめた節があります。このあたりは、契約締結にあたっての両当事者の力関係が影響してくるところです。土地リース契約において、K社は排除すべき競合他社の範囲を可能な限り広くしておきたい立場であるのに対し、A社は自分の所有土地の効率的運用する観点からその範囲をなるべく狭くし、いろいろな飲食店業をできるだけ多く誘致したいと考えるわけです。従って、この肝心な部分の契約文言については、ちょっとでも自社サイドに有利な解釈が可能であれば、それを援用しようという思惑が常時存在しているといってもいいでしょう。まさに虎視眈々、食うか食われるかの世界です。

和訳

土地所有者は、本契約締結日以降は、土地所有者が所有し、管理し、又はその他支配する土地であって本件賃貸地から1マイル以内にあるものについて、ファストフードレストランを建設する目的で、又はその土地の上で骨付き鶏肉、骨なし鶏肉又はチキンサンドイッチを主要商品とするファストフードレストラン又はレストラン施設を経営する目的で、その土地を売却若しくは賃貸してはならず、又は占有させてはならない。

 

 


#11-04

契約条項の曖昧さとejusdem generis(同類解釈則)の適用

メモ

アメリカの大手スーパーであるKmartが締結した、売り場に関するリース(賃貸借)契約の文言の曖昧性に関して争いになったケースです。下欄引用の条文は長いので、途中からの部分的引用です。

Lease Agreementの契約当事者はLandlord (=Sunshine Shopping Center, Inc.)Tenant (=Kmart)です。

争いになったのは、L.10-11に記載されている“candy, cookies and other miscellaneous foods”の解釈です。この契約に基づき、Kmart売り場で食料品の販売を行いましたが、その中には、穀物類、粉末クリーム、紅茶、コーヒー、酒類、ソーダ、フルーツジュース、缶詰類、サラダドレッシング、調味料、米料理、パスタ食品なども含まれていました。Sunshine側はその取扱食料品の範囲は契約に違反していると主張して、訴訟を提起しました。

裁判所は、ejusdem generis(同類解釈則)と呼ばれる解釈原理を援用してSunshine側を勝たせました。ejusdem generis(同類解釈則)とは、制定法、契約書、遺言その他の法律文書で、まず具体的な言葉が記され、次に一般的な文言がかかげられているときには、反対の意図が明確に読み取れる場合を除き、後者は、前者と同類・同種のもののみを指すと解すべきであるという解釈原理とされます(英米法辞典)。

英文

()

1

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Tenant agrees with Landlord that so long as Sunshine Super Markets, Inc. d/b/a Sunshine Supermarkets its affiliates or successors is operating a supermarket or grocery store on the property described in Exhibit "A" Parcel B, Tenant agrees that it will not use the demised premises for the operation of a food supermarket or food department or for the sale of off-premises consumption of groceries, meat, produce, dairy products, baker products or any of these. The foregoing shall not, however, prohibit: (i) the sale by a restaurant operation, lunch counter, deli or fountain of prepared ready to eat food items, either for consumption on or off the premises (ii) the sale by Tenant, its successors and assigns, candy, cookies and other miscellaneous foods in areas totaling not more than Ten Thousand (10,000) square feet of sales area, exclusive of aisle space.

語句

L.2

 

L.3

L.4

L.5-6

L.8

L.11

L.12

d/b/a: 〜の名称で営業中 (doing business asの略)

(cf. a/k/a: also know as(別称), f/k/a: formerly known as (旧称))

grocery store: 食料品店

demised premises: 賃借物件、賃借不動産

off-premises consumption: 食料品などをその場で食べないで持ち帰ること

fountain: 飲料販売機

Ten Thousand (10,000) square feet: 929平方メートル(280坪弱)

aisle space: 通路用のスペース

両者の

主張

“the sale by Tenant, its successors and assigns, of candy, cookies and other miscellaneous foods in areas totaling not more than Ten Thousand (10,000) square feet of sales area, exclusive of aisle space”の解釈に関して、

Kmartは次のような主張をしました。

売り場面積が10,000スクウェアフィートを超えない限り、Kmartはすべての食料品を販売することができる。

 

Sunshineは次のような主張をしました。

契約条文がKmartに許可しているのは、キャンディ、クッキー、及びこれに関連する食料品目のみを10,000スクウェアフィートを超えない売り場面積において販売することである。

裁判所の判断

(1) 契約書の文言について曖昧さがある場合には、ejusdem generis(同類解釈則)が適用される。

(2) 但し、契約書の内容から反対の意図が明確に読み取れる場合は、この解釈原理は適用されない。

(3) 本件の場合は、"candy, cookies and other miscellaneous foods"の正しい意味は曖昧であり、ejusdem generis(同類解釈則)が適用される。

(4) ejusdem generis(同類解釈則)を適用した場合、“candy” and “cookies”は特定のものを指す言葉であり、“other miscellaneous foods”は一般的な用語である。この“other miscellaneous foods'“candy” and “cookies”という特定の言葉との関係で解釈すると、その意味は“candy” and “cookies”に関連したその他の食品ということになる。

和訳

Sunshine Super Markets, Inc.Sunshine Supermarketsの名称で営業中)、その関係会社又はその後継会社が、本契約別紙Aの付属Bに定める場所でスーパーマーケット又は食料品店を営業している限り、テナントは、賃借物件を食料スーパー若しくは食料デパートの営業を目的として使用せず、又は持ち帰り用の雑貨・食肉・農産物・乳製品・パン/ビスケット/菓子類・その他これらに類するものの販売を目的として使用しない。テナントはこのことについて貸主に同意する。但し、以上のことは、通路スペースを除く10,000平方フィートの区域において、次の(i)(ii)を行うことを禁止するものではない。(i)持ち帰り用であるかどうかを問わず、 レストラン、ランチカウンター、又は出来合いの食料品販売機による営業、(ii) テナント、その譲受人又は承継人によるキャンディ、クッキー及びその他の食品の販売。

 




#11-05

契約条項の曖昧さとContra Proferentem(起草者不利の原則)の適用

メモ

会社側が起案作成した雇用契約中のサラリー条項に関し、会社は、解雇した従業員に“2% commission”を支払う義務があるかが争われた米国ノースカロライナ州の事件です。“During the Term”(「契約期間中」)は第2文も修飾するのでしょうか。

英文

1

2

3

4

5

6

Annual Salary.

During the Term, the company shall pay an annual salary of $90,000.00, payable in commensurate with the company's regular payroll cycle, in consideration of providing the Services for and on behalf of the Company. In addition, Employee will receive a 2% commission paid monthly on all billed work primarily secured by the Employee.

語句

L.3

L.3-4

in commensurate with: 〜にあわせて

in consideration of: 〜の対価として

会社側と従業員の主張

裁判で会社側は、“During the Term”は第1文だけではなく、第2文も修飾するのは明らかだとして、従業員xxxはすでに解雇され契約期間は終了しているので従業員xxxには2%を手数料を支払う必要はないと主張。

これに対して従業員xxxは、“During the Term”は第1文だけを修飾しており、第2文にはかからない。従って、契約期間後であっても契約期間中に獲得した”billed work primarily secured by the Employee”が残っているのであれば、それについて2%の手数料を受け取る権利があると主張。

裁判所の判断

裁判所は、上記条項の“During the Term”がどの範囲を修飾するかは曖昧であるとしつつ、メリーランド州法では「契約書における曖昧さは、その契約書を作成した当事者に不利益なように決定される。何故なら、その契約書を作成した当事者はその条項の意味を理解し、説明するよりよい機会を持ち得たからである」(Maryland law states "ambiguities in an instrument are resolved against the party who made it or caused it to be made, because that party had the better opportunity to understand and explain [its] meaning.)として、会社敗訴の判決を下しました。

曖昧さの除去

会社の立場からこのような争いを予防するためはどうすればよいか。いくつかの方法があると思いますが、簡単なのは項 (paragraph) に分けることでしょう。

(1) During the Term, the company shall pay an annual salary of $90,000.00, payable in commensurate with the company's regular payroll cycle, in consideration of providing the Services for and on behalf of the Company.

(2) In addition, Employee will receive a 2% commission paid monthly on all billed work primarily secured by the Employee.

あるいは次のようにしてもクリアできると思います。

(1) During the Term, the company shall pay an annual salary of $90,000.00, payable in commensurate with the company's regular payroll cycle, in consideration of providing the Services for and on behalf of the Company. In addition, Employee will receive a 2% commission paid monthly on all billed work primarily secured by the Employee.

(2) Notwithstanding the immediately preceding paragraph, Employee shall have no right whatever to receive any annual salary or commission on or after the date when the Term has been expired, terminated or cancelled.

和訳

契約期間中、会社は、会社のために提供された本件役務の対価として、会社の通常の給与支払サイクルにあわせて年間給与90,000米ドルを支払うものとする。さらに、従業員xxxは専ら同人が獲得した請求書ベースの仕事のすべてについて、その2%を手数料として毎月受け取るものとする。

 

 



#11-06

Contra Proferentem(起草者不利の原則)の適用を排除する規定の例

英文

1

2

3

4

5

6

Construction. 

The Parties have participated jointly in the negotiation and drafting of this Agreement. In the event an ambiguity or question of intent or interpretation arises, this Agreement shall be construed as if drafted jointly by the Parties and no presumption or burden of proof shall arise favoring or disfavoring any Party by virtue of the authorship of any of the provisions of this Agreement.

語句

L.5

L.5

L.6

presumption: 推定(ある事実の存在から他の事実の存在を推認すること)

burden of proof: 証明責任

by virtue of the authorship of: 起草者であることを理由として

和訳

解釈

両当事者は、共同して本契約の交渉及び起草に参加した。曖昧さ、意図又は解釈の問題が生じた場合は、本契約はあたかも両当事者によって共同して起草されたかのように解釈されるものとし、そして如何なる推定又は証明責任も本契約の規定の起草者であることを理由としていずれかの当事者に有利又は不利に発生することはないものとする。

⇒ <#09-07>も参照。